大親友、ユーゴ・デノワイエ(Hugo Desnoyer)
私が18歳の時、妹の同級生に面白い少年がいました。彼はなんと肉が大好きだったのです。当時14歳だった彼は学校の勉強は自分の役には立たない、と日々の生活にうんざりしていました。そしてある日突然友人達にこう宣言したのです。
「僕はフランス一、いや世界一の肉屋になる!」
この突拍子もない発言に周囲の友達は大笑いし、それ以来彼から離れていきました。でも、数人の友達と妹を始めとした私たち家族は、真剣に語る彼を見守り、応援しました。
精肉業界で働きたくて働きたくてうずうずしていたユーゴはそれから3年後には精肉の学校を修了し、パリの280km西にあるラヴァル(Laval)という街で精肉店をしていたドゥルオ氏(M. Drouaud)の下で働きだしました。ドゥルオ氏はいわゆる職人気質の古い人間で、ユーゴはここで食材や肉の見極め方を体で覚えていきました。
修行から数年が経つと、ユーゴはパリに移ることに決めました。そう、彼の目標はフランス一、いや世界一のブーシュリ(精肉店)を構えること。そのために彼は密かに計画を練っていたのです。
パリの有名ブーシュリを何店か渡り歩いた彼はある店にたどり着きました。そしてある日、そのオーナーがこう言ったのです。「私はもう引退だ。お前にこの店を譲ろう。金は出世払いで構わんよ。」
オーナーは日々ユーゴが肉、それ以上にその元となる動物に愛情と敬意をもって接する姿を見て、彼なら間違いなくこの店を大きくしてくれると確信したのでした。
それから約9年・・・。パリ、14区にあるユーゴの店「ブーシュリ・デノワイエ」は今やミシュラン星付きレストランのシェフご用達の有名精肉店になりました。ランブロワジー、ガニエール、アルページュ、アストランス、ジャマン、リッツ、サンドランスなど有名レストランは皆彼の店の商品を愛用しています。そしてなんとエリゼ宮(大統領官邸)も彼の得意先です。
彼の店が有名シェフ達から絶大な信頼を受けているのはその品質にあります。ユーゴがこだわって仕入れている商品の一部をご紹介しましょう。
仔牛
フランス南西部コレーズ県(Corréze)の仔牛です。ユーゴは月1~4回開かれているフランス仔牛品評会での上位4頭を買い取っています。月齢は3か月以上6ヶ月以内、枝肉重量で140~170kgです。ユーゴはまず仔牛の全体を見た後、脚の細さを確認、(細いほど肉をたくさんかかえた良い肉です。)目の色が濁っていない、きれいな白であること、皮が薄いことなど瞬時にチェックします。枝肉の状態で仕入れる時は肉や脂肪の付き具合、色(薄白っぽいピンク)、あばら骨が細いこと、肋骨周辺の肉に霜が降っていること、腎臓脂肪は指でつぶした時にサブレのようにボロボロとくずれるか(ゴムのようなものはダメ)、など入念にチェックされます。
ビーフ 
品質の安定性があり、高い評価を得ている品種、リムジーヌ、サレール、オブラック、ブロンド・ダキテーヌなどを仕入れています。これらの牛の飼育農家はすべてユーゴが実際に訪問し、その餌の状態まで確認しています。(彼は草や大豆、亜麻など飼料の質までチェックします。)彼の仕入れる肉はすべて4~6歳以上で、また良い霜降り状態にするため仔牛を2,3頭は出産している必要があります。それらの条件を満たし、更にユーゴのプロの目にかなったもののみが店頭に並ぶのです。
ポーク、ラム、家きん、ハム など
ポークはドルドーニュ県(Dordogne)産のフリーレンジ・ポークです。フランスで200年以上前から行われている飼育法で、自然の状態で放し飼いされたポークです。
またラムはロゼール(Lozère)産のみを扱っており、パリ、フランス一の品質との評価を得ています。
クートゥイ社のヴァンデ産クロワゼ種仔鴨、パルミフランス(私の会社です…。)厳選仔鳩、ゴロワーズ・ブランシュ種の鶏(非常に珍重されている足が青い品種です。)、幻の鶏と言われるトゥーレーヌ地方のジェリーヌ黒鶏(ジェリーヌ・ドゥ・ドゥーレーヌ/Géline de Touraine)、ラカン(Racan)産仔鳩、ブレス(Bresse)産の鶏(プーレ/poulet)、肥育した雌鶏(プーラルド/poularde)など高級家きんも充実しています。
加工品も最高級のベヘールブランドのイベリコベジョータの生ハムや20か月熟成黒ラベルトレベレスハムなどが並びます。生のフォアグラなどもあるんです。
このように厳選された最高の肉のみを取り扱うユーゴは、フランスの料理雑誌やテレビ・ラジオ、海外メディアでも取り上げられ、パリ一、そしてフランス一の肉職人、いや、まさに肉の「アーティスト」だと称賛されています。彼の夢は叶ったのです。
応援してきた私や家族も彼の成功を心から喜んでいます。最高の肉を店頭に揃えようと常に努力をしている真面目なユーゴは今や私の大親友でもあります。夢を現実のものとしたと思われる彼ですが、まだまだ夢は大きく、今は世界に目をむけて突進しています。
先日はトップトレーディング同行のもと、和牛の勉強をしに日本へと旅立っていきました…。(その日本紀行の様子はトップトレーディング・スタッフが近いうちに報告してくれる予定です。)いつしか行列のできる彼の店に霜降り和牛が並ぶ日が来るのかもしれませんね。 そして彼が本当に「世界一」の肉屋になる日が来るような、私にはそんな気がしてなりません。
私たち家族はそんな彼をこれからも応援し続けます。
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